人生100年時代、相続対策では備えられない(1)

2025年には5人に1人が認知症

人生100年時代という言葉をよく耳にしますね。実際、数字で見てみると日本はどんどん高齢化しています。​​2022年には、65歳以上の高齢化率が29.0%と過去最高を記録しました。

2012年に7人に1人だった高齢者の認知症患者の割合が、2025年には5人に1人(約730万人)に増加すると推計されています。

 団塊の世代が全て75歳以上となる2025年には、全人口の18%が後期高齢者になり、さらに 将来に目を向けると、2040年には高齢化率が35%に達すると予想されています。これらの数字からも、高齢化社会が進む中で、認知症患者数も増加していることが伺えます。
経営者の方も多くいらっしゃると思いますが、経営者の高齢化も年々進んでおります。先日東京商工リサーチから発表された2023年「全国社長の年齢」調査によると、社長の平均年齢は2023年に63.76歳(前年63.02歳)と過去最高となりました。
国はこれまでも事業承継支援に力を入れてきましたが、まだまだ事業承継が遅れている問題は続いています。
経営者の高齢化は、すなわち、認知症により会社の経営そのものが危ぶまれるリスクがあるのです。

認知症か?もの忘れか?

ここでひとつクイズです。
次のうち認知症によるもの忘れにあたるものはどれでしょうか?

①「みかん」「電車」といったよく知っているものの名前がでてこない
②テレビで見た有名人の名前が思い出せない
③自分の自転車をどこに停めたかが思い出せない
④財布をなくして探していたが、冷蔵庫の中で見つかった
⑤電子レンジで温めた料理を出し忘れた
⑥料理をしたが、後になって誰がいつ作ったか分からない

加齢によるもの忘れは脳の老化によるものであり、体験したことの一部分を忘れる程度で、判断力や日常生活にはあまり影響を及ぼしません。
一方、認知症は認知機能の低下が進行し、体験したことをまるごと忘れるなど、判断力や日常生活に支障を来す点が異なります。
①~⑥のうちですと、①、④、⑥が認知症の特徴的な症状といえるでしょう。


自己肯定感がもたらす影響は大きい

認知症の症状には、①認知機能の低下と、②行動・心理症状の2つがあります。
①認知機能の低下は、記憶障害や注意障害、言葉や日付・場所の見当識障害、そして段取りの実行機能障害が挙げられます。
②行動・心理症状は、暴言・暴力や無為・無関心、不安・うつ、妄想、徘徊、睡眠障害、幻覚などが挙げられます。 行動・心理症状については、本人の性格や周囲との人間関係、介護の受け方、生活環境によって、現れ方が異なるという特徴があります。疾患の重症度や進行とは、必ずしも比例しません。

 認知症になると、昔は普通にできていたことができなくなりますが、こうした状況に最も悔しい思いをしているのは、ほかでもない本人です。自分の行動に不手際が目立つようになり、周囲の人から注意されたり怒られたりすると、次第に自信を喪失するようになります。行動・心理症状は、「自己肯定感」と大きく関連性があると言われています。「自分が生きているのには意味がある」「存在する価値がある」といったことです。周囲がこうした気持ちを理解し、本人が自己肯定感を持つことができれば、行動・心理症状は緩和することができます。

認知症予防の効果が期待できる習慣・趣味

私はつい最近、認知症サポーター養成講座を受講しました。そこで教わった、予防効果が期待できる習慣・趣味について7つご紹介します。

(1)散歩をする
健康の基本ですね。血流がよくなり脳が活性化されます。

(2)日記をつける
毎日書くことで右脳と左脳を刺激します。
また過去に書いた日記を読み返すことで成長する自分を再発見できます。

(3)料理をする
献立を考えたり、段取を考えることで脳が刺激されます。

(4)恋をする
気に入った異性がいると、おしゃれや会話の話題に気を遣うようになり、ニュースや流行に敏感になります。
推し活など誰かを好きな気持ちは人を元気に若々しくするのですね。

(5)旅行の計画を立てる
見知らぬ土地へ行くことが刺激になることはもちろん、鉄道やバスの乗り継ぎなどを考えることで脳が活性化されます。

(6)社交ダンスをする
音楽に合わせて踊ることで脳が活性化します。また、パートナーを次々と替えることも効果的です。

(7)囲碁、将棋、麻雀をする
頭を使うゲームは脳を刺激します。仲間と一緒に楽しめるので、長く続けることができます。

 認知症は遺伝よりも、後天的な要因の方が圧倒的に大きいようです。意識して、これらを生活習慣に取り入れ、長く続けることが大事です。
認知症サポーター養成講座は、認知症に関する正しい知識を身につけ、地域で認知症の方やその家族を支援するための講座です。講座を実施するのは、自治体や企業、職域団体などで、誰でも無料で受講ができます。

認知症になったらどうなる?

私たちは、認知症にならないよう予防したり、認知症の方との接し方を学んだり、認知症自体の対処方法に目を向けがちです。
しかし、認知症発症後のほうにも目を向けておく必要があります。
 認知症になってしまうと、どうなってしまうのか。このことを、次の投稿で解説します。